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コスギ君チャレンジ!② 「筋性拘縮の状態で車椅子に乗ってみる~後編」

コスギ君チャレンジ!② 「筋性拘縮の状態で車椅子に乗ってみる~後編」

こんにちは、認知症状消失広場です。

われらがコスギ君が要介護高齢者の気持ちを知るために、体当たりで経験します。
題して「コスギ君チャレンジ!」

今回は、前回に引き続き「車椅子体験」の後編になります。
筋性拘縮(※高齢者が長い間寝たきりなどの理由により体の部位が廃用性の委縮を起こしている状態)が両膝に起きた状態を、認知症状消失広場の久保さんに再現していただきました。
コスギ君には、膝の曲げ伸ばしがかなり制限される状態で車椅子に45分乗り、高齢者の気持ちを体験してもらいます。

前回、なんとかエレベーターホールまでたどり着いたコスギ君ですが、果たして……?

バリアフリーじゃない!

フロア入口のわずか5mm弱の段差につかまってしまったコスギ君、なんとか乗り越え、エレベーターホールに辿り着きました。

今回は階移動はしませんが、エレベーターのボタンが気になったようです。
手を伸ばして、通常の高さのボタンを触ってみます。

「ボタンの位置、けっこう高めですね。腕を伸ばさないと押せない」

その後、隣にあった車椅子マークのボタンも触れてみます。こちらは低めの位置に設置されているため容易に押せます。
「こっちは楽に押せます。やっぱり車椅子用ボタンって大事ですね」とコスギ君は感心した様子です。

ようやく目的の自動販売機が置いてある場所に到着しました。
「めちゃくちゃ疲れた……」
コスギ君はすでにぐったりした表情です。

実は最初この企画が立ち上がったときは、もう少し長い時間で体験する案も出ており、コスギ君もやる気だったのですが、久保さんから「普通椅子に座るよりも車椅子に座るのはむずかしいです。まして拘縮再現した状態で車椅子に乗るとものすごく疲れるでしょうから、短い時間の方がいい」とアドバイスがあり1時間弱になったという経緯があります。
もし長時間で決行していたらもっと疲れていたのでしょう。

「時間が経つにつれ、どんどん姿勢が歪んでいくから、左右のバランス、力の入れ具合がおかしくなって疲れていくんだよ」
と、説明する久保さんの話を遮って、コスギ君が声を上げました。
「これじゃ車椅子の人はトイレ行けないよ」
自動販売機のすぐ傍にトイレがあるのですが、そこは完全に段差があり、入口の幅も車椅子は到底が通れない狭さです。

「バリアフリーじゃない……」
「そうだよ。だからコスギ君が車椅子使わなきゃいけない状態になったら、会社ではトイレ行けないってことだね」
「…………」

飲み物を買います。
小銭を自動販売機に入れるのは問題ありませんでした。が、いちばん高い位置にある飲料類のボタンは、かなり高い位置にあります。
身長177cmのコスギ君は上背もそれなりにありますが、下半身に拘縮を再現されて脚が固定されているため、踏ん張りがききません。腕を頑張って伸ばしてみてなんとか届きました。
「これ、小柄な人は絶対押せない。買えないと思う」

下段のコーヒーを買い、お釣りを取り、コーヒーを受け取り口から取り出すのも一苦労です。

拘縮のせいで上半身を前のめりにすることが難しいと言います。ひとつの動作が終わるたびに「疲れた」と呟いています。心なし、動き自体が鈍くなっているようです。

「体の動きを制限されると、何かしようという意欲が失われてしまうんですよ」
久保さんの言葉に、コスギ君が頷きます。

「たしかにそうですね。やる気にならないです。飲み物を飲みに行くのも、買いに行くのも面倒くさい」
「おじいちゃん、おばあちゃんが外出したがらなくなるってそういうことだよ」
「そうか……小さな理由で、やめようってなるかもしれない。段差とか。ボタンが高いところにあるとか……」

自動販売機の前で方向転換をするのに苦労していると、トイレに行こうとした社員の方に「邪魔だよ」と言われてしまいました。もちろん相手がコスギ君だとわかっているから言っている冗談なのですが、
「実際、こういう意地悪なことを、車椅子のおじいちゃんおばあちゃんに言う人もいるのかもしれないな……」
と、コスギ君はしょんぼりしていました。

拘縮を解いて体験終了。しかし…

仕事部屋の自分のデスクの前まで戻りましたが、フットレストに足をのせている状態では膝がデスクにひっかかります。左足の固定を解いて、ようやくPC前に座れました。

「丸一日じゃなくてよかったです。脚が突っ張って背中や脚の筋肉が張っちゃって。寝っころがりたいです」
「今、介助されてトイレ行こうって言われたら行けそう?」
質問に、コスギ君は顔をしかめます。
「車椅子で移動、もういやですね……。体力使うしとても疲れるし……あ、そうか、だから『もうおむつでいいや』って思うのかも」

「車椅子生活でこのような状態にさせないために、歩く訓練をするんだよ。でも、ただ歩かせるんじゃない。自立して生活するために、いかに動機づけするか。それが大事だってわかるよね。無気力な状況に陥ってしまっているから、なによりこういう身体的な障害を取り除いてあげないといけないし、精神的なところもカバーしなければいけない。少しでも自立性の回復をサポートすることが、僕たちの仕事のひとつ。」
久保さんが力を込めて言います。

「立ってみて」
と久保さんに促されて、両足で立つコスギ君。
ところが――右足の甲が突っ張ったままになって戻らないと言います。

「足首あたりが伸びきった感じになってるよね? それが尖足の感覚だよ。寝たきりのおじいちゃんおばあちゃんが、足の甲が伸びて曲げれない状態になって固まってしまうの、あるでしょう。それが疑似体験できたんだよ。そのために伸ばして拘縮したんです」

予定の時間が来て、久保さんがサランラップを切って疑似拘縮を解いてくれました。
「サランラップ取っても、この体勢から変わりたくないんですけど…」
と、ぐったり座ったままのコスギ君に久保さんは、

「これは、悪い記憶がパターン化されてしまった状態です。悪い姿勢を続けていると、その姿勢が楽に感じられてくるんです。悪い姿勢なのにそれが普通の、当たり前のこと、体にとって正常であると誤って記憶されて思い込んでしまう」
こんな短時間でもそうなってしまうのかと、実際に体験したコスギ君は驚いています。

今回のチャレンジはこれにて終了です。
最後にコスギ君から、体験した感想を。

「体が不自由な状態が続くと、何かをしようという意欲を失うんじゃないかなと思いました。自動販売機で飲み物を買おうとしても、デスクでパソコンを触ろうとしても、思ったところに手は届かないし、前屈みになれないし……やろうと思ってもできないから、くじけてしまうんです。不便な状況で足も自然な状態じゃないからどんどん疲れてしまって、ただもう横になりたい、寝っころがりたいなと。高齢者の方はもっと大変だと思います」

車椅子は、脚の不自由な方には勿論必要で重要なものです。
でも、久保さんの言葉どおり、高齢者は可能な限り「自分の足で歩く」ことを目指したほうがよいこと、それによって他の事への意欲も湧くのではないか。
それがコスギ君の感想でした。

「コスギ君チャレンジ!」いかがでしたでしょうか。
次回は「片麻痺体験」にチャレンジします。
「片麻痺」とはどういう状態なのでしょうか……?
ご期待ください。

※「コスギ君」は弊社社員小菅君の愛称です


小菅 広幸(こすげ ひろゆき)

平成2年、神奈川県横須賀市生まれ。高校時代はサッカー部に所属し、サッカー中心の生活。大学では比較文化学を学び、海外への留学経験もあり。現在、株式会社プリンシプル勤務。愛称は、コスギ君。ハンバーガーが大好物。

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