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コスギ君チャレンジ! (3)「寝かせきりされてみました」~後編~

コスギ君チャレンジ! (3)「寝かせきりされてみました」 ~後編~


こんにちは。コスギです!

突然ですが、皆さんは「介護された」ことはありますか?

普通に暮らしているとなかなか気付くことができない「介護される側の気持ち」。特に寝かせきり状態の要介護高齢者は、どんな気持ちなのか…前回に引き続き体験レポートをお送りします。

寝かせきり体験、開始

研修ホールの端っこに置かれた介護ベッドに、僕は寝かされています。
ここからは約1時間、僕ひとりです。

(※編集注:コスギ君に、この体験中に感じたことを口に出してもらい、枕横のレコーダーに録音しました。)

掛け布団が少し暑いけど、自分では調整できません。(本当はできるけど、左腕は絶対に動かすなと久保さんに言われているので我慢します)


右腕が拘縮状態にされているので、右側に向いて寝転がってるのに右腕が宙に浮いてるみたいで、気分悪いです。
右の二の腕部分が緊張してる感じがします。筋肉が張ってるのかな? 
このままでいると、本当に、身体が固まってしまいそうな気がします……
左脚が膝をたててる状態で、右脚と合わさって足首で固定されてるのかな? 自分からは見えないので、自分の身体だけど、どうなっているかは分かりません。


研修ホールの端っこにいますが、通路を歩いていく人は見えます。
さっき、社員のK藤さんが通って、僕と目が合ったと思うんですけど、声は掛けてくれませんでした。

今も、久保さんが通ったのに無視です。つめたい。

仕事だから、がんばります。


通って行く人はけっこういるのに、僕がここにいることは気づいてもらえないのか、誰も話し掛けてきません。

社長がホールを通り抜けていきました。こっちをチラ見したけど特にかまってもらえず。忙しいのかな。


自分で体が動かせないと誰かに動かしてもらいたい……
でも誰も相手してくれない…


自分で体を動かすことのできるようになることって大切なんだな……なんにもできないとずっとベッドの上にいるしかできない。

さっきまで腕がつらかったけど、だんだん脚がつらくなってきました。

左脚が膝の立ってる状態で、右脚、膝部分がベッドについてるけど、膝下は宙に浮いてる感じです。なので、右脚の膝から下の部分がぴりぴりしてきました。

僕は寝返りについて10分ごとにしてもらいたい……いや、3分がいい……3時間、長いよ……3時間も介護職員の人、お年寄りを置いてきぼりにしてるの……?

――いけない、これは仕事だ。ベッドで寝て拘縮状態を体験する仕事。


身体が動いて仕事できるっていいね。


拘縮してても、自分で動きたい気持ちは、あるみたいです。
いやあると思う。


拘縮してる人ってベッドでどうやって過ごしてるんだろう?
テレビを見る? 音楽聴いてる?
手が使えないからテレビのチャンネル変えれないな。本も読めない。
介護スタッフや看護師さんが来るのを待ってるのかな?


人と話すのが楽しいだろうな。


ごはんも、誰かに食べさせてもらうのを待ってるのかな。
ごはん食べるのも歩くのも、どんな体勢で寝るのかも人にやってもらうのか……つらい。でも動けないから仕方ない。

何を楽しみにすればいいんだろう……?

ぼーっとしてるしかないのかな。



Oさんが通ったのに声かけてくれません。10秒くらい僕のことじっと見てたのに。声掛けって大切だな。
拘縮の人って声掛けてくれるのを待ってるのかな。

あ、T中さん(※編集注:コスギ君チャレンジをやると絡んでくる“意地悪な社員”さん)だ! M田さんもいる。T中さんは僕に気づいてるようです。

あれ?
いつもは「邪魔」とか「設定何だよ」って絡んでくるのにT中さん…今日は素通りしました……寂しい……


あ。歌ったら、楽しいかも?
……でも寝ながらだとしゃべりにくいし、歌いにくい。
声も出しにくいから、知らないうちにあんまりしゃべらなくなっちゃうかもしれない。

今、何分経ったんだろう? 時計置いてってくれなかった。何時だろう?
時間の感覚が無くなるな……あとどれくらい、この体勢してないといけないんだろう。

そもそも、なんで拘縮になっちゃうんだろう? 脳梗塞?

色々な「つらい、苦しい」が重なってる気がします。

拘縮そのものもツラいけど、誰とも話ができないのも、時間感覚が無いのもツラい。ふだんからずっとベッドで寝ていたら、誰も僕を気にしないんじゃないかな?存在感がなくなっていく気がする。

カメラマンのK坂さん、突然来て写真たくさん撮って、撮り終わったら帰っちゃった。
声掛けすべきじゃない?「写真撮っていいですか?」って。

治るかもしれないっていう希望があったら、元気出るかもしれないな。

僕は今、これに「終わり」があると知ってるからがんばれるけど。

拘縮の人たちはベッドで寝て、これが治らない、終わらないのなら、きっともう動きたくない、やる気も起きない、って思っちゃうだろうな。


介護職員が、ベッドだけ揺らして行っちゃった。なんの声も掛けていかなかったな。悪い介護職員だ。きっと拘縮の人って体中痛いだろうし、ベッドが急に動かされたら痛いだろうな。体勢変えてほしかった……

左脚がしびれてきました。時間が経つほどにしびれている場所が変化します。

これだけ時間経って、この体勢に慣れてくると、腕伸ばさなくてもいいかなっていう気がしてきた。
このままでもいいや、とにかく眠らせてくれっていう感じになっちゃうのかも。

なんかやばいな……

***(数分経過)

……今、寝てた?

右手がどこ行ったか一瞬わからなくなりました…
自分の腕と脚がどこにいったかわからない、すごく気持ち悪い。

さっきトイレ行っといてよかったです。こんな状態でどうやってトイレ行くんだろう?
背中がかゆくなってきました。でもなにもできない。

早く終わらないかな……

(※この後約10分、寝息)

体験を終えて

やっと、みんなが来てくれたようです。久保さんだけでなくいろんな人が覗き込んでます。

「なにがつらかった?」「ここはどう?」と言いながら、あちこち触って確認してくれています。

感覚が鈍くなっててわかりづらい。終わった……。本当に体が固まってしまうかと思いました。時間の感覚もないし、やばいです……

久保さんが布団を外してくれました。やっぱりけっこう汗かいてました。拘縮を外してくれています。


「あんまり、身体動かしたくないでしょ?」


そうですね、このままが楽って感じです。
動きたくない。誰かに動かしてもらいたい……


M田さんが急に背中からくすぐってきて、僕は笑いながら跳ね起きました。
久々に動いた気分です。


孤独感がすごかったでしょ? 
活動性が落ちると、無力感とか不安とか孤独感が強まる。

人間は活動しているから、いろんな情報が入ってきて、自分が今どういう状況なのかというのが認知できるんですよ。

さいごに

今まで2回、部分的に拘縮再現して体験してきましたが、今日がいちばん、拘縮してる人のイメージができた気がします。

拘縮そのもの、身体が動かないことやしびれて感覚がなくなってしまうこともつらいのですが、それよりも、誰にも気づいてもらえない、話しかけてもらえないことがつらかったです。

久保さんが「声掛けは大切」と常々言っているのがとてもよくわかりました。
あと、この先「治る」「よくなる」っていうのは、希望だなと思いました。

次回もまたチャレンジしたいと思います!


小菅 広幸(こすげ ひろゆき)

平成2年、神奈川県横須賀市生まれ。高校時代はサッカー部に所属し、サッカー中心の生活。大学では比較文化学を学び、海外への留学経験もあり。現在、株式会社プリンシプル勤務。愛称は、コスギ君。ハンバーガーが大好物。

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